前回は、糖尿病の食事療法における大変な点をお話しました。
現在食事療法を行っている人のうち8割が何らかのストレスを感じており、なかでも「食事量の制限」と「糖質の制限」がネックとなり食事を楽しめないと感じている人が多いようでした。
今回は、そのような中でも、食事を楽しんで美味しく食べるコツをお届けします。
糖尿病の食事って美味しい?
「食事量の制限」がなく「糖質の制限」がない食事。
そのような ものは存在するのでしょうか。
はっきり言うと、残念ながらそれ はありません。
おっと、がっかりしないでください!
これはなにも糖尿病の人に限った話ではなく、健康な人であっても、食事量の制限なく手当たり次第に食べていれば、肥満や生活習慣病等の問題を引き起こすことになります。
ですので、「なんの制限もない食事」というものは、そもそも目ざすべきではありません。
われわれの目ざす食事療法は、「ちょっとのコツで」「美味しく」「続けられる」食事療法。少しの工夫で最大限の効果を狙うのが目標です。
糖尿用の食事 GI(グリセミック指数)法とは?
そこで今回とりあげたいのが、「グリセミック指数法」別名「GI法」です。
いくつかの研究結果から、GI値の低い食べもので食生活を組み立てた場合に、2型糖尿病と心臓病のリスクが低くなることがわかっています。
また、国際糖尿病連合は、糖尿病の治療に低GI食品の利用を挙げています。
GI法は、GI値というものを基本に行われる食事法です。GI値というのは、炭水化物を食べた時の血糖値上昇度合いです。
読者の皆さんはご存知だと思いますが、一口に糖質といっても、食品によって体内に取り込まれた後の血糖値上昇は異なります。
もちろん、血糖値上昇の速度がゆるやかであればあるほど、インスリンの過剰分泌を防ぐことができるため、糖尿病の改善に繋がっていきます。
このGI値を利用しない手はありません。
GI値は3つのグループからなります。
これらを順に説明していきましょう。
・中GI食品(56-69): 全粒粉製品、バスマティ、サツマイモ、スクロース
・高GI食品(70以上): ジャガイモ、スイカ, 白パン、白米、コーンフレーク、シリアル、グルコース、マルトース
注目は、やはり炭水化物。白パン・白米などは、インスリンが過剰に分泌されやすい高GI食品であるため、極力避けたほうがよいということになります。
「なーんだ、結局ご飯食べちゃいけないのか」と思ったあなた、低GI食品の項目を見てください。
そう、「低炭水化物製品」とありますね。
炭水化物が含まれていても血糖値上昇がゆるやかな食品があるのです。
この食品であれば、血糖値上昇を比較的気にせず食べることができるんです。
食パンや白米、うどんといった高GI炭水化物食品は、90近くあります。
対して、低GI炭水化物食品の代表である、スパゲッティは65。
中華蕎麦は54、蕎麦は50です!同じ炭水化物であっても半分近くも違うんですね。
麺類が食べたい時は、うどんよりも、スパゲッティや中華蕎麦やふつうの蕎麦を食べるようにしましょう。
さて、気になる「白米」ですが、残念ながらこれは高GI値です。
しかし玄米であれば、なんと54まで抑えることができます。
玄米は、白米を生成する前の状態のものです。
玄米から糠(ぬか)と胚芽(はいが)を取り除き、胚乳(はいにゅう)のみにしたお米が白米になるんですね。
中身は同じだから、「しっかり食べた」という充実感を得ることができます。
100g中の糖質量は玄米で72.5g、白米で75.5g、となっており、その差は決して大きくありません。
しかし、GI値はぐっと低く抑えられているため、血糖値の上昇がゆるやかに抑えられるのです。
ちなみに、パンであればフランスパンは93、食パンは91ですが、クロワッサンやマフィンは70台です。
「ちょっとややこしくて覚えられないなあ」という人に取っておきの方法を教えましょう。
それは、「主食は、白よりも茶色を食べろ」ということです。
玄米も蕎麦もクロワッサン・マフィンも低GI食品はみな茶色ですね。
迷ったら「白よりも茶色」と覚えておきましょう!
糖尿病の食事を美味しく食べるメニューの例
われわれの目ざす食事療法は、「ちょっとのコツで」「美味しく」「続けられる」食事療法。
少しの工夫で最大限の効果を狙うことができます。
ここでは3人の方の事例をご紹介します。
仕事柄、店屋物が多かったし。食べないようにしていても、ある日突然我慢の反動から天丼を大量に食べだりしていました。
見かねた主治医に、「ご飯よりも蕎麦やスパゲティの方がまだましですよ」と言われました。
スパゲッティはともかく、蕎麦だったら気軽に食べられるし、なにしろ主治医のお墨付き(?)なのでだいぶ安心して食べられましたね。
罪悪感のない食事っていいものですよ。
心理的なストレスがなくなったんでしょうかね。自然とバカ食いしなくなりました。
蕎麦は、小麦粉のない10割蕎麦のほうが良いそうで、最近は蕎麦の食べ歩きが趣味になりました。
白米は血糖値が上がりやすいと聞いてからずっと玄米を食べています。
硬さと独特の風味があるので最初は慣れませんでしたが、炊く前に水に浸して柔らかくしたり、炊飯器のモードを玄米用にしたりなどして試行錯誤した結果、ふんわりと炊けるようになりました。
もともと米好きだっただけに、噛みしめると滋味が広がって、心から「美味しいなあ~」と思えるようになりました。
歯ごたえがあるのでしっかり噛む必要があり、いつのまにかたくさんは食べなくなりましたね。毎食満足いく食事をしています
性格がアバウトなので、計測などはせず、「野菜を多め、主食は少なめで最後に食べる」をルールにやって来て、これまで10年間悪化せずに過ごせたのはそのルールのおかげかなと思っていましたが、最近網膜症の所見があると言われて、もっと勉強しなきゃと思いました。
それで行き着いたのが「GI法」でした。
新しい栄養士さんに聞いたりしながら楽しんでやっています」